こんにちは。ブルート通信編集長の佐藤嘉洋です。

当誌は2007年に名古屋市西区の『ぶるーと整骨院・鍼灸院・整体院』の院内報として創刊し、ついに今号で200号を迎えました。 当初はA4一枚を自宅のプリンターで刷っただけでしたが、｢前の月よりも少しでも良いものに」という精神で作り続けていたら印刷会社に発注できるようになり、三つ折りパンフレットになり、そして現在は2000部発行の雑誌に成長しました。

これまでいくつもの革新を加えてきたブルート通信ですが、その中で最も好影響を与えたのが、コロナ禍から始めたデザインの勉強です。それまでは基礎知識が皆無のまま応用の技術や知識を取り入れていたせいで、ごちゃごちゃのデザインになっていました。

つまり、個性はあれど、本来自分の伝えたいことは埋もれていた状態です。デザインは両雄並び立たず。主役が複数いると、どっちつかずになってしまう。しかしながら、主役と脇役をうまく使い分けるのは非常に難しいです。

美術大学でも教鞭をとっていた武田邦彦先生も「芸術には悲しみが必要だ」と仰っていました。確かに、並び立たせたい主役を泣く泣く脇役にしたり思い切って削除するのは、まさに悲しみ。しかし同時に、その主役の魅力はより増すのでしょう。

水槽は風情のある火鉢

デザインの基礎を学び始め、初めてのブルート通信が2021年7月配布の１６５号でした。その記念すべきコラム『三才の金魚が 水から飛び出して 死んでいた』は、私の中では大きな話題を呼びました。

三歳の金魚、ポニョが居なくなり、もう一匹のプニョは悲しみに暮れているように感じました。それから一年後の春先、プニョも水から飛び出して死んでいました。四才でした。

我が家の水槽は義理の祖母から引き取った青い火鉢です。その中に水を入れ、砂利石、水草を準備し、現代テクノロジーをなるべく使わずに住みやすい調和した環境を目指していました。

水の中を小さな地球にたとえて世話しています。日々の観察で水草などによる自浄作用を超えて水が汚れてきたら、前夜に汲み置きした三分の一程度（バケツ一杯）の水を換えます。

酸素不足のサインである鼻上げをしたことはなかったので、それなりに調和していたと思われます。ポニョもプニョも丈夫な品種の和金だったので、よく順応してくれました。しかし二匹とも亡くなりました。

水中はひっそりとしましたが、魚に食べられる危険性のなくなった水草のマツモはホッとした様子か。

金魚は人のために生きている

金魚博士と呼ばれたこともある小学生の時分、大曽根の早川金魚店を中心に、いくつかの観賞魚専門店をよく回っていました。ハマったキッカケは、何かのプレゼントで五匹の金魚が贈られてきたことでした。他にも買い足して多いときは三つの水槽で飼育していました。運も良かったと思いますが産卵にも成功しました。

金魚の王様とも呼ばれる『らんちゅう』も飼育しました。この子は背ビレがないので上からの観賞に向いています。だから通常の水槽ではなく、金だらいに水を入れて環境を整えました。エサは、ご馳走らしい冷凍赤虫をあげつつ育てました。母親は嫌がりましたが、どうしようもないので家の冷凍庫で保存しました。

ちなみに金魚の女王は『オランダシシガシラ』です。しかし王様や女王と勝手に名づけたのは人間です。らんちゅうやオランダも当然雌雄があるのに。

話は違う魚に泳ぎますが、シーラカンスを生きた化石と呼ぶのも可哀想だと思いませんか。老け顔なだけで彼らにも当然赤ちゃんだった時期があるはずです。

閑話休題、プロキックボクサー時代にも、金魚を何度か飼っています。猫も一緒でしたが、大丈夫でした。いろいろ飼った中で一番儚い命だったのはピンポンパールという種類でした。かわいかったけどね。

金魚は、人間の愛玩のためにフナから進化（生命的には退化）させた哀れな命です。過酷な自然環境下ではとても生きてゆけない。丈夫な和金でもギリギリ行けるかどうか。らんちゅうではとても無理です。だから飼うとなれば、愛でてやらなければなりません。金魚は私たちのために生きているも同然なのですから。

淀ませはいけない

しばらくして近所の茶屋ヶ坂のホームセンターへと出向きました。個人店はめっきり減りましたが、今は金魚も猫も犬もカメもウサギも椅子も机も一緒くたになって売られています。すごい世の中になったものです。

私はそこでらんちゅうを二匹購入しました。この環境なら虚弱ならんちゅうでも火鉢で飼えると判断したからです。丸みを帯びたらんちゅうはかわいらしい。大きい方を「ランラン」小さい方を「チュウチュウ｣と娘が名づけました。 らんちゅうは和金と違って、より気を使います。何度か軽い怪我を負ったり病気にかかりましたが、ひとつまみの粗塩を入れて治しました。金魚の様子が変だなと思ったら、水換えと塩で乗り越えてきました。

しかし、今年の６月に父親が他界した日に、我が家に来て一年を超えたチュウチュウも突然死してしまいました。相棒をなくしたランランは、落ち込んだ様子で食欲もあまりなく少しずつ痩せていきました。

また、一匹だけになったから水の汚れるスピードも遅くなるかと思いきや、それどころか随分と早く汚れるようになってしまいました。残されたらんちゅうの動きに元気はないにも関わらず、です。これは如何なこと。

すぐ汚れるようになった水を換えているうちに気づいたことがあります。水差しで水を加えてやると鈍かった金魚が少し嬉しそうに素早い動きを見せたのです。そこで私はピンときました。逆に動きが少ないから汚れるのではないか、と。ううむ、ここはついに現代テクノロジーを駆使するときが来たのかもしれない。

そこで今度は竹の山のホームセンターへ行った時に、メダカ用の小型のエアフィルターを買いました。そして水槽に苦心惨憺してセットしました。火鉢は球形なので吸盤がつきにくいのです。そしてエアフィルターを作動させ、やさしく水を吸い上げながらも水流を作ると、淀んでいた水が少しずつ動き始めたようです。

翌朝には劇的な変化が訪れました。水の流れができたことで水中に酸素を送ることに繋がり活性化したようです。しばらく悩まされていた水面の油膜はすっかり消え、らんちゅうのランランも以前のように元気になりました。以前は二匹いたからこそ水流が生まれ、うまく循環していたのでしょう。

数日経つと水も綺麗さを保つようになりました（毎日１ℓの水換えはしつつ）。ランランの食欲は、今までの少食を取り戻すかのように旺盛になりました。

水が淀んでいると水中は低酸素になります。すると好いバクテリアが生息しにくい環境になり、水質汚染が早く進みます。水も淀ませてはいけないことを学びました。

換気で気分爽快

空気も同様です。私は水槽を小さな地球だと仮定していますから、これは私たちの世界にも繋がっていきます。まず、元気でいたいなら淀んでいてはいけないということです。動いてこそ、流れを作ってこそ活力が出ます。物理的にも精神的にも風通しを良くすると元気になれます。マッサージを受けたり、サンドバッグを叩いたり、ドライブしたり、掃除したり、模様替えをしたり、映画を見たり、本を読んだり、それらを仕事や家庭に活かしたりと、人生は風通しを良くすると爽快なことがたくさんあります。

まずは換気だけでも多少は元気になれます。書道部屋でもある具鷲庵も当初は淀みがちの空気でした。そこで換気扇を取りつけ、サーキュレーターで風通しを良くしました。目を瞑れば草原にいるかのような快適空間が実現しました。現代テクノロジーのおかげです。

さて今月のグルメはカレー特集、辞書の旅特集は侍と武士道をセットでお届けします。一緒に侍魂に触れていきましょう！

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