
有我秀雄 先生
ありがひでお
今月の一言
今年初の蕎麦打ちをしました。久しぶりの割には上手く出来ました。次は十割蕎麦に挑戦してみようと思っています。

小俣与葵 先生
おまたよしき
今月の一言
今年のドラゴンズ、 バンテリンドーム狭くなるのが吉と出るか凶と出るか。
ブルート通信218
明生人嘉 ~ Myojo Jinka 146 ~
自ら進む地獄は楽しい
本当は「不思議な金魚」や「土は神か」という大変面白い話題もある。しかし今やブルート通信の主軸でもある辞書の旅の進捗が目まぐるしいので、まずはそれを報告したい。
2023年6月、私は広辞苑第七版の辞書の旅へと出かけた。なんと3冊組であった。序文と説明文の後に本文の「あ」から始まって「そ」までが前巻。「た」から「ん」で後巻。そして付録だけで独立して1巻……
辞書を引くのではなく読んだことのある人は少ないだろう。しかし本来は、書物の冒頭に作り手の情熱や大切な成り立ちが詰まっているはずなのだ。
CHAGE & ASKAも「推理小説を最後からめくれるはずはない」と歌っている。もちろん辞書は小説や漫画のような物語ではない。多くの人は読まないし、最初から開かない。
老眼になる前に読破したい
広辞苑の前には故事ことわざ辞典と四字熟語辞典の併読に初挑戦していた。しかし、それまでの国語辞典と比べると語釈や補説には物語も多く、超短編小説を読んでいるようなもので毎日楽勝だった。だからコロナ禍に調子に乗り、中学生以来に書道も再開した。鍛え上げた継続力で全ページ一語以上書き切り、初の具鷲個展も開催した。
楽を覚えると人間は碌(ろく)なことがない。厳しい道を覚悟して取り組んだ辞書併読だったが、意外と楽な道程だった。そしてその旅の最終盤、豊田市の原田屋書店から広辞苑が届いてしまう。
「次はこれを読めってか。いいですよ。 僕はもう辞書併読に打ち克ってるんで」と安請け合い。序文と説明文を1日2ページ読み進める中で、老眼になる前に広辞苑を読破したいという目標を持ってしまった。1日1ページだと10年近くかかる計算。微妙だなあ。
いざ本文へ突入。意気揚々と2ページ読んでみると、「愛」が出てこない。試しにもう1ページ読んでみるとあった。それ以来、1日3ページずつ辞書の旅を続けている。
当初は、広辞苑の情報量の多さに暗澹たる思いにもなった。
中型辞典は大きさからして違う。小型辞典の約1.5倍。フォントの大きさはほぼ変わらないため、1ページの情報量は2倍近くに感じる。
これまで読んできた新明解と明鏡は1500ページを超えるが小型辞典。広辞苑はなんと阿鼻叫喚の3500ページ超え。
だが、自ら進む地獄は楽しい。
辞書の旅をしている限り、常に最高の自分でいられる。だから毎日最高の気分である。地獄に、天国があるのである。
辞書の旅は、ただ辞書を読むだけではない。読んだページの中から気になった語を意味と共にスマホへ書き出し、自分の感想や小説、天から降りてきた言葉などを付け加え、好きなように発信している。
これまで読んできた辞書にはそれぞれ特徴がある。それに合わせて辞書の旅の形式も順応してきた。広辞苑でも様々な方法を模索し、現在の形に至っている。これからまた変わるかもしれないし、固定したままゴールするかもしれない。辞書の旅の道は自由だ。好きなように進もう。
閑話休題、先ほどから広辞苑を中型辞典と呼んでいるが、では大型辞典はあるのか。もちろんある。そして我が家にもすでにある。日本国語大辞典である。岐阜県の高校から送られてきてしまった。なんと20冊組だった。
大型辞典は、辞書の旅の太陽や宇宙のような存在かもしれない。到底辿り着けない。しかし、そんな偉大な存在があるからこそ、人は謙虚な気持ちを持てるのかもしれない。
ちなみに日国の第三版2034年に刊行予定らしい。今の広辞苑の約8倍のボリュームなので、この気狂いじみたペースでもざっくり計算で30年かかる。しかしそのときの私は、まだまだ現役のつもりの80代。意外といけたりして。
自ら開発した目の簡易的なトレーニングも9年継続している。3年で車の免許もメガネ無しOKになった。老眼も今のところ来ていない。このまま努力を続けるから、ずっと来なければいいのに。
世界遺産地獄
広辞苑の特徴として世界遺産もほとんど載っている。「か行」あたりで「広辞苑で世界遺産巡り」というコーナーも作ってしまったから大変だ。その後、世界遺産地獄に悩まされることになる。「愛知県の地名シリーズ」も作って尚更懊悩。
歌人は居ながらにして名所を知るという諺(ことわざ)もあるが、現代は電気のおかげで精神だけは瞬時にその場所へ行ける。これはとんでもないことである。現代人は、誰でも風雅な歌人の境地に容易に到達できる。
広辞苑は俗語も多い。下ネタも数多く取り上げた。SNSにアップするときは凍結覚悟で投稿したものだ。「い」では「いん」、「せ」では「せい」が盛り上がった。
2025年春、おかげさまで広辞苑の前巻1734ページは2年足らずで読破できた。日本語は「さ行」を読んでしまえば、あとは、するするするする、なのである。
この夏、大変な栄光にも恵まれた。愛知県美術館で開催された毎日書道展で席上揮毫(書道パフォーマンス)に連日抜擢されたのだ。2日目にはNHKのニュースにも取り上げていただく僥倖。広辞苑前巻を書き切った甲斐があった。
後巻最初の「た行」も凄まじかった。なんせ「太陽」「地球」「月」がある。しかし長さとしてはそれほどでもない。次の「な行」も思いのほか短く、少し気が緩んだのかもしれない。思わぬ伏兵の「は行」に苦戦した。世界遺産も多すぎで辟易としたが、無事旅を終えた。次の「ま行」では伝説の俗語登場に沸きつつ、最後はモンローを取り上げて勝負をつけた。広辞苑読破までもう一踏ん張り……かと思いきや、まだ付録が一巻あることを忘れてはならない。
橦木館で記念個展開催
私は一心不乱、本文に夢中で、付録のことは無頓着だった。むしろ多く見積もって1000ページくらいかと覚悟していた。
確認すると付録はたったの400ページだった。先ばかり見ていると途方に暮れる。だが目の前の1ページを進めていたら、気づいたときにはゴールは近くにあった。逆算すると、この冬には広辞苑第七版の辞書の旅を完遂できそうだ!
そしてビッグニュースもある。2027年GW、名古屋市東区の文化のみち 橦木館にて、広辞苑の辞書の旅を題材にした具鷲個展が開催予定だ。乞うご期待。
ということで、いつも読んでいただき、誠にありがとうございます。今号も引き続きお付き合いいただけたら幸いです。
佐藤嘉洋



